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「人はなぁ、もう、その人に会えん様になってしもても、…それまでに得た絆は…失わへんのや」
「…失わない?」
「せやなぁ」
雪之丞は空を見あげる。

「儂は、救えへんかった者がぎょーさんおる。…ぎょうさんの…者を失くしてな、
 自分は、この世に一人やと思とった。
 …せやけどな」

そして、自分の横に立つZEROを見下ろし、そしてゆっくりと笑む。

「…失のうた思とったんは、なぁんも無かったんや。
 儂が、そう思い込んで、背負て、自己満足な感傷に浸ってただけなんや」

「………己には、その感情は分からない。…生身の人間ではないのだから」
「…何言うてんねん?…そないに考えて、…想て、悩んで……
 そんなん、人間そのものちゃうんか?」

ZEROは、考え込むように、しかし、ゆっくりと頭を振る。

「悩もうと苦しもうと、己のなすべき事は決まっている。
 感傷的に浸ろうとも、…それは一時的なモノ。
 己には無用のものだ」

「…せやけど……いや…さよか」

言葉は、それ以上紡がれない。


シンとした空気の中、夕日が2人を照らす。


「一つ、聞いてもいいか?」
「ん?何や?」

「…絆は、なくならないのか?
 例え、もうその相手が、…見つかる事がなくとも、」
「失わへん。…失わへんよ」
自身に言い聞かせるように、雪之丞は反芻する。

「おらへん様になってもた相手とは、もう会う事は叶わへんかもしれへん、せやけどなぁ」

言葉を区切り、雪之丞はZEROを見下ろす。
備わっていないはずの、…彼の瞳が強く、答えを待っている様な気がした。

「…せやけどな、その時の絆は、また別の出会いを、絆を生む」
「…別の?」
「ああ、そうや」

ガシャ

不意に、雪之丞はZEROの頭を撫でる。

「雪乃丞氏…何だ急に…」
「儂はなぁ、ZEROの兄ちゃん。…お前さんに会えて、良かったと思うてる」
「……」
「安穏がありがたいなんて望みはないけどな、
 せやけど、こないに争い合うこの街でなぁ
 こうやって作れた絆を、…儂は簡単に断ち切ったり…したくはないねん」

「……雪乃丞氏」
「なんや、あかんな。感傷的になってまうわ。
 ……昔なぁ…娘がおったんや。…可愛い…子でなぁ
 今は…もう…」
「…己には母親しかいないから、その気持ちはあまり分からん…が、
 …きっと、似たものなのかもしれない」
吐く様に、ZEROは言葉を紡ぐ。
思い出したくない記憶に痛む様に。


「…なんや…そうやったんかZEROの兄ちゃん。
 せやったら、意味ないかもしれへんけど、
 儂の事、「お父ちゃん」て呼んでもええんやでぇ?」
出し抜けに、明るい声で雪之丞は笑う。

「…何?」
「子供ののうなったおっさんと、母親のおらへん子供と、
 まぁ、そない簡単なもんでもあらへんけどなぁ」
「……」

「あー…ええとな、今のは、

黙りこくってしまったZEROに、冗談だったとでも軽く言うべきか暫し雪之丞は考え込み、

「…いいのか?」
「え?」
しかし、それはすぐに相手によって断ち切られる。


「その言葉に、甘えてもいいのか?」
真摯に見上げる表情。


「…ええに、きまっとるやろ」
瞳を閉じ、もう一度、ZEROの頭を撫でる。
ゆっくりと。


「…なら、言葉に甘えるとしよう、『親父殿』」
ハッキリと、ZEROは雪之丞に向かって、そう呼びかける。

「……なんや、そう畏まって呼ばれると…なんやこう、照れくさいがな」
困ったようにしかし、どこか嬉しそうに、雪之丞は呟く。


「照れる事なのか?この『絆』は、親父殿がくれたんだろう?」
「…ああ、いや、それはちゃうで?ZEROの兄ちゃ…いや、ZERO」
「そうなのか?」
「せや」
雪之丞は、ゆっくりと首を真横に振る。

「『絆』ちゅうのはなぁ 一人で作ったりでけたりするもんとちゃうねん。
 ……二人おらんとな、でけへんのや」
「…そういう、ものなのか」
「そういうもんなんや」
深く、今度は頷く。


「…まだまだ、色々知るべき事が、己には多い様だ」
「大丈夫や、先はまだ長いんやからなぁ」

明るく雪之丞は笑い、そしてゆっくりと歩みだす。
その後ろを同じ歩調で、ZEROは歩き出す。

2つの影は夕日に照らされ、
どこまでもどこまでも、ゆるやかに伸びていった。



  fin

\(^o^)/絵はまた今度!
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2008.10.21 


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