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カムイ トゥラノ カムイ トゥラノ ウトゥラノ シノッチャキ アン ロ


涼やかな声が聞こえた。
意味は分からない。
ただ、明瞭に透き通った声が、心地よかった。

見上げれば、雪の様に白い髪の子供がいる。
声の主らしい。

どこかの、国の民族衣装だろうか。
違和感無くそれを着、片手に己の身長に近い剣を持ち、
そして楽しそうに、舞う。


「夏狐」

不意に、歌は止まる。

子供の傍らには一匹の、狐が座っていた。
いつの間にか。


「夏狐、僕は…もうすぐ此処を出て行く」
静かに、子供は狐に話しかける。

「アイヌではない、この瞳は、髪は、人々を不安にさせる。
…いつ、カムイの目に止まるかも分からない」

淡々と、声は続く。

「だからね、夏狐、君ともお別れだ。
…うん?……え?
…駄目だよ、だって、君はこの刀を、守らなきゃいけないんだろう?」

会話をするかのように子供は狐に向かって2,3度頷き、そして伸びをするように、
両手で剣を掲げる。
鞘の装飾が、印象的な刀であった。
そう、とても見覚えのある、




「…ゆ…き、さん?」
そうだ、その鞘は、


「え?」
不意に子供が振り返る。

青い目の、少年。
まさか、
ここは、記憶の中だ、
気が付くなど、


………

けれども、その青から瞳が外せず、

しかし、少しずつ、視界はぼやけ、





「……リオ、」



………


「ソラーリオ!!」

「う…あ、はい!!」
耳元で聞こえた声に仰天して身を起こす。

キョロキョロと見渡せば、安堵と落胆の入り混じった表情の、いつもの面々。


「……あともう少し長く寝れいてばいいのものを、」
「あーあ、眼鏡掛けさせたかったなぁ」
だまらっしゃい。
視界の端に移る、ありや嬢と馬鹿眼鏡に小さく毒づく。

「大丈夫ですか?」
「…流石に、今回は駄目かと思ったが、いや、異常は無さそうでよかった」
「ああ、ありがとうございます。…ええと、一体?」
明花嬢の差し出してくれた水を飲みながら、難しい顔のMr.ガルシアを見上げれば
ふぅ、と小さく肩をすくめる。

「何、いつもの事だ」



「いや、すまんのぉ…ちぃと小突いたつもりが、打ち所が悪かったちゅーか…」
申し訳無さそうに髭をしゃくりながら雪之丞が苦笑してソラーリオの前に立つ。

「いやぁ…鞘でちょいと突いただけなんやけどなぁ…」
「Mr.雪之丞、…自身が思っている以上に力が入っているんでしょうな」
「そうかのぉ…」
ううん、と不思議そうに雪之丞は首をひねる。


「………」
「ん?どないしたん?鞘か?」
「いえ、あの、」
仮面越しに凝視したのが分かったのだろうか、ソラーリオの視線に雪之丞は鞘を持つてを上げる。

「雪さんは、…どこの出身でしたっけね?」
「んー?…まぁ、暗黒街…ではないのぅ…いや、この喋り口調でわからへん?」
「関西でしょ?雪之丞さん!」
「…大阪訛りよりも、神戸訛りが強いかも…」
ひょい、と2人が会話に加わる。

「せや、ヤストの兄ちゃんもありや嬢ちゃんも、2人とも正解や。
関西の…まぁ、最初にいてたんは京都なんやけどなぁ。
途中から神戸や大阪にも移ったんや」
「ああ、なるほどー」
納得した顔で2人は頷く。

釈然としないままなのは、ソラーリオだ。

自身が記憶を見間違える事などない、
あれは、日本というよりは、それに近い、

「ソラーリオ、」
「はい?」
思案は、彼を呼ぶ声に遮られる。

「それはまだ、知らん振りしてくれ…な?」
「雪さん…」
雪之丞の瞳に、一瞬蔭りが映る。

「……そうですねぇ、この私に黙っておけだなんて、さて、口止め料はどうしましょうかねぇ?」
「…短い付き合いやったな、」
チャキリ、と刀が鳴る。


「じょじょ、冗談ですよ!?嫌だなぁ…全く…」
全身の血液が一瞬で氷点下になる気分を味わいながらソラーリオはブンブンと首を横に振った。

「ん?何の話してるの?眼鏡の話?」
「だまらっしゃい変態眼鏡」
「あ、何!?何が変態なのさ!酷いよソラーリオさん!」
「ああ、眼鏡が移る。話しかけないで頂きたいですね」
「何!?ちょっとそれ酷くない!?」

いつも通りの、空気が戻ってくる。

ガルシアと明花は再びゆっくりと酒を飲み始め、

雪之丞とありやはどの菓子が美味しいかと吟味し始め、

そして、ヤストとソラーリオは、いつも如くの眼鏡戦争。

いつも通りの、



ふと、ソラーリオは雪之丞の背を見た。
灰掛かった、長髪。
しかし、どうしてだろう。
その長髪の先が、記憶で見た、狐の尾に、酷く、

似ているような気がした。
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2008.10.25 


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