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「はう……」

とうとう、24日も過ぎ、25日も半分以上終わってしまった。
何度も、何度も頑張ったけれど、結局無理だった。
カモフラージュに、ソラーリオさんや、雪之丞さん、…ちょこっと、顔見知りの常連さんや友達にも作ったけれど、
そんな言い方はアレだけれど、
これは、一番気合を入れて、一番…心を込めたのだ。

なのに、
肝心のそのマフラーと、それからセーターは…
未だに自分の手元にある。

…だって、でも、何もない今日に渡すのってきっと変に思うだろうし、
それに、…手作りとか、もしかしたら嫌がられるかもしれない。
……うう……

心がしゅん、と暗くなる。

けれども、そんな暗い気持ちのまま、店を開けるなんてしちゃ…駄目だ。


……よし!切り替え切り替え!

無理に気持ちを奮い立たせ、ワーズは店へと道を急ぐ。
そんな感情でいるせいか、彼女は…
いつもの敏感な耳で危険を察知する筈の彼女は…

背後にそっと迫る影に、気が付かなかった。

そして、


「……!」


意識は、闇へと堕ちていった。



懐かしい、夢を見た。

独りぼっちじゃない、夢。

寝れない時は、いつもそうしていた。

そう、こっそり、布団にもぐりこむのだ。

最初は暖かい背中を見て、うとうとしていて、

気が付けば、あの人はこちらに寝返りを打って、

私が寒くならないように、ぎゅう、と抱きしめてくれる。

そして、


「ふにゃ……」

いつの間に寝てしまっていたんだろう。
ぼんやりとワーズは重いまぶたを開ける。
眠気まなこは、そこに暖かい、大きい背中を見た。

ああ、…この背中だ。

いつも、安心できた、…あの背中だ。

遠慮がちに、そっと、その背に手を伸ばす。


「お、とー……さ、………え?」
自分の声を自分で聞き、違和感を覚える。
伸ばされた手は、スラリと白い、大人の、私の腕。
…じゃあ、目の前の人は……

「………」
頭が真っ白になる。

だんだんと、脳内が清明さを取り戻す。
酷く。

……これ、夢じゃなくて、

………

…………何だっけ…なんで、こうなってるっけ……
でも、兎に角、ここから、出なきゃ…

微動だにしないその背を神経質に見つめながら、そっと、ワーズは自身に掛けられている布団を手に掛け、
…そして、僅かな衣擦れの音がし、

刹那。

カチャリ、

え?

聞きなれない、機械音。
目の前には、こちらを向いた銃口。
そしてその銃を持つ相手の顔がいつの間にかこちらに向いており、


「「……え?」」

互いに口から漏れたのは…頓狂な声。
目の前にいる人物が、信じられなくて、


「ガル、シアさん?」

「…Miss,ワーズ…?」

聞きなれた、深く低い声。
瞳は驚愕に見開かれて、
何故か、ワーズは慌てる。

「ち、違うんです!その、あの、急になんか眠くなって、気が付いたらここ、………え…?」
ガバリ、と起き上がり言い訳ともつかぬ言葉を並べながら、
…何だかスースーする涼しさを感じる。

「……」

…瞳を、自分の体に落とす。

赤い、リボンだ。
真っ赤な大きいリボンに、巻かれている、自身。

…じゃなくて、そう、じゃなくて、

裸、…。
…裸!?

思わずガバリ、と胸の辺りを手で覆う。
なんで…なんでなんで?!

「……あ、…あう、ちが…これ、…」
助けを乞うようにガルシアを見やれば、いつの間に起き上がったのだろうか、しかし何故か、
向こうを向いてしまっている。


「…ちが、違うんです…こ、これ…だって、わ、私、…あう……」
言葉の代わりに、嗚咽が漏れる。
けれども喉が、渇いたようにカラカラで、
見上げた背は、向こうを向いたままで、

「き、…嫌いに……嫌わないで下さい…わ、……ふぇ…」
無理だ。
だって、こんな、人の布団にもぐりこむような、そんな悪い子。
そんな、悪い、子…

寒さではなく、ガクガクと肩が震える。
ああ、嫌われるなら、
好きになってもらえないのなら、
いっそ、
いっそ、

「…Miss,……ワーズ」

声が聞こえた。

やめて。

嫌だ。

嫌な言葉は聞きたくない。

お願い、

胸でぎゅう、と握り締めた手に、痛いほど、爪が食い込む。

「…Miss.ワーズ」

嫌、

続きを言わないで、

嫌、

嫌。

ぼろぼろ零れる涙は止まらない。

「Miss,ワー……」

呼びかけた言葉は、固まる。

…それで、いいの。

私の事は、いいの。

そのまま、放っておいてくれれば、

………



「…ワーズ」
不意に、耳元で低く、優しい声がした。
遅れて、急に、暖かいものに、包まれる。

反射的に顔を上げれば、白いガウンの様なものの、肩が見えた。

あ、
……今、私、

包まれるように自分を優しく抱きしめる、その腕にワーズは一気に顔を紅潮させる。

「あ、あの…」
「ワーズ、落ち着いて」
耳元で囁かれた声に、くすぐったい暖かさを感じ、きゅ、と目を閉じた。

……真っ暗な中で、心音を感じる。
早鐘を打つような、自分の心音と、それよりもゆっくりな相手の心音。

暖かさに少し体を預けると、相手の腕は支えるように少し強く自分を抱き竦める。
このまま、まどろんでしまいたい衝動に駆られ、
うとうと、とし掛けた頭を、しかし無理にたたき起こせば、
いつの間にか、早鐘の心臓は相手と同じ、ゆっくりとしたリズムに落ち着いていた。


そうしてゆっくりと瞳を開ける。
そお、と上目遣いに見上げれば、
少し困ったような、笑ったような、そんな彼の表情が見て取れた。
いつものポーカーフェイスではない、
とても、心地よく優しい、表情。

「…あ、あの…ですね…これは、その、」
何だか恥ずかしい気持ちになって(今更だが)顔を腕に埋めるように瞳を逸らせば、
ああ、と訳知った様にガルシアは呟く。
「こんな悪戯を思いつくのは、…大体想像が付く」
「そ、それも…そう、ですね…」
思わずぱっと思い浮かんだ何人かの人物。
その中に犯人はいる。
間違いなく。

「随分、落ち着いたようだな」
「……あ、…はい…」
気恥ずかしいまま、ワーズは小さく答える。

「寒いだろうが、暫く我慢していてくれ。すぐに15号に服を持ってこさせよう」
「すみま…せん」
15号君はこんな状況を見ても驚かないだろうか?
ガルシアさんのポールマンだもの、冷静そうに思える。
携帯を片手に、自分を抱きしめたままのガルシアを見上げ、
頭の隅で、どこか呑気な事を考え始める。

でも、…それにしても、
誰の仕業とかにしても、本当に誰が…


「…全く、性質の悪い冗談だ…ん?」
彼女の傍に落ちていたカードに気が付く。
携帯を置いた片手でそのまま拾い上げると、“ご自由にどうぞ”と書かれた、達筆な文字。
筆跡を調べればすぐに誰の仕業か分かると言うのに…
いや、そうではなく。

「……全く本当に…こんな下らん事を…」
「そ、…う、ですよね。ご、ごめんなさい…私、」
「……貴女が謝る事ではない。寧ろ被害者だろう。この場合は」
やれやれ、とガルシアがため息を付く。
勢いで彼女を抱きしめてしまったものの、その腕を解くタイミングが見つからない。
気まずそうに、少し、間が空く。


「あ、あの、私、その、服着たらすぐに、か、帰りますね!その、だって、ごめんなさい…
め、迷惑ですもの、ね。
だって、いきなりこんな、」

ふや、と目の前がぼやける。
いけない、また困った顔をされる、
そう思うのに、ぽろぽろ、涙が止まらない。
抱きしめてもらっているのに、こんなに近いのに、
けれども困った顔をする彼を見るのが、辛くて、悲しくて、

「あまり、おかしな事を言わないでくれ」
「あ、う、ごめんなさ、」
「……そんな顔でそんな事を言われると、こちらも理性を保っていられなくなる」
「へ、あ、そ、そうですか…って、え…」
あまりにサラリ、と言われたものだから理解できなくて、
一呼吸置いて、ワーズは見る見る紅潮する。

「あ、あう…え、えと…」
パニックて、頭がぐるぐる回る。
違う、そうじゃない、落ち着いて、何て、何て、答えれば、

「あ、あの、ですね、」
身じろぎし、慌てるように顔を上げれば、
つま先に、何かがカサリ、と当たる。
紙の様な、つるつるした感触。

「あ、ごめんなさい、少し…」
おず、と彼の胸を押すようにすれば、あっさりとその腕からワーズは開放される。
そのまま、自分のつま先にある物の正体を覗き込み、彼女は驚きで目を見開く。

……私の編んだ、セーターと、マフラー

それが綺麗にビニールで包装され、赤いリボンで…自分みたいに巻かれている。

「Miss,ワーズ?」
「あ、あの、これ、あ、えっと、」
そうだ。
今、今がチャンスなんだ。

「これ、クリスマスにって、編んだので、その!」
足元から引っ張り出したそれを思い切りガルシアに差し出せば、面食らったようにガルシアはそれを見つめる。
「私に?」
「え、ええ!あの、ソラーリオさんとか雪之丞さんとか、その、ありやさんとかにも編みまして、じゃなくて、その、あ、あう…」
焦ったせいか余計な事まで口から飛び出る。

ああ、もう、私っていつもこんな…

しゅん、と垂れた耳のままガルシアを見上げれば、

彼は、
笑っていた。
楽しそうに、優しげに。

「…ガルシア、さん?」
「いや、すまない。…その、…こんな事で笑うのは…失礼なのだが…
服を着ていない貴女に、服をプレゼントされるなんて、…全く…らしい、
いや、有難う。受け取らせて頂く」
クツクツ、と肩を震わせ受け取るる彼に、ワーズは釣られて笑ってしまう。

「あ、あは…確かに私…ええと、何と言うかその、タイミングが……ッちゅん」
言い終える前にワーズは口に手を当てる。
ベッドの上とはいっても、裸はどうしても体が冷えてしまう。
今まで両腕に包まれていたのだ。…少し、肌寒さを感じるのも当然だ。

「…む…風邪を引いてしまっては困るな」
「あ、えと大丈夫です…こうやって、…ひ、ひゃう!?」
毛布を体に巻きつけようとしたよりも早く、ガルシアが自分を抱きしめたので
ワーズは混乱する。

「人肌が一番温かいというし、な
15号が来るまで、すまないが、こうしていよう」
「…あ……はい」
じんわり広がる暖かさに、ワーズは照れるように、しかしもう、否定の言葉は無かった。

静寂が、
それは緊張でも不安でもない、心地よい静寂が、ワーズを包む。






ああ、
出来るならば、
サンタさん、

一日遅れのサンタさん、

少し、
ほんの少し、
もう少しで、いいの

15号君が来るのが、

もう少し、

遅れますように…




優しい腕の中で、
そっとワーズは瞳を閉じた。




そしてエピローグ、またはプロローグへ

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2008.12.26 


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