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しとしとしと。


しとしと。


泣くように。


しとしとと。


寒い、雨。





「らーんらーんるー♪」

その雨を楽しむかのように踊るのは、ポールマンの最後のナンバリングを持つ、50号。
2人の主人を持つ、ちょっと不思議なポールマン。
手には買い物袋。
買い物途中に振られた雨だが、焦る様子も無く、ゆったりとした足取りで歩いていく。



「ん、…んーん?」

不意に、視界に何かが見えた。
何か、人の様な何かが、…倒れている。
否。様な、ではなく…人、そのもの。

「生きている?死んでいる?それとも寝ているの?」
怖がりもせず、たったとその倒れている人に近づく。

ピクリとも動かないそれを、じぃ、と見つめる50号。

「……正解は…3番…」
「…おぉ?」
小さく聞こえた声に、50号はまじまじとその倒れる人を見つめる。

「じゃあ寝言?」
「…いや、今しがた、起きたんだよ?
…ああ、ええとなんだっけ…
これ、その、…この、雨の、…季節は冬の…ええと、ああ、肌寒い。だ、確かこれは」
まどろむように、その人は呟く。
その横で、真面目にうんうん。と頷く50号。

「ところでさ、その、君?まん丸い…満月君?」
「なぁに?」
満月君、に否定も肯定もせず、首をかしげて50号は笑う。

「この辺りで、名前は何だっけな…お酒を置いているお店、知ってるかな?」
「うん!知ってるよー♪」
はにかむ男に、はしゃぐ様に50号は、答えた。




「遅いなー」

「………」

「嬢ちゃんも、あそこに行ったきり、…50号は買い物行ったきり帰ってこない。
…しかも雨。
……あー暇」

「…………」

「…はぁ…寝よっかな…」

「…仕事をしろ。仕事を」

だるだるーとカウンターに突っ伏する雪之丞に、ようやく風は返答する。

ここはBAR、ワーズワーズ。
夜市小路の西の入り口にある、憩いの場。
真面目に風を吹かしながらグラスを磨くのは、喋る白い虎、通称『風』。
だるだるしている狐耳の青年は、『雪之丞』。
店の主人が戻らない事には店も開くに開けない。
…開こうと思えば、開けられるのだが。

「…まぁ、あれだなぁ…ガルシア倒れたって伝えたから、今頃懸命に看病してんじゃない?」
「看病…な」
フン、と風は、どことなく不機嫌そうにグラスを拭く。

「…ん?ヤキモチ?ヤキモチか?」
「そんな下世話なものでは……ん?」
言葉の応酬をやめ、ピクリ、と風は耳を動かす。

「ああ。この足音は嬢ちゃんやな」
もそり、と立ち上がり、主人のために扉を開かんと、雪之丞は戸に手を掛け、


カランカランカラン!!

「…ッな…?!」

荒々しい音と共に、店に飛び込んでくる…ワーズ。
立ち位置的に、抱えるような格好になってしまった雪之丞はと惑う。
「ど、どうした嬢ちゃん?…雨で急いてたか?ずぶ濡れ…ん?」
冷たい雫が垂れる中、その頬に伝う暖かい雫に、雪之丞は固まる。

「……何か、あったのか?」
「なんでも…ないんです。…なんでも…」
押し殺した声。
「…何でもないって、そんな格好で言われても。…おい、風。タオル」
「心得てる」
雪之丞の胸に、顔を埋めるようにしているワーズの背に、風はそっとタオルを掛け、拭いてやる。

「…ガルシアとか?」
「……」
ビクリ、と肩を震わせるワーズ。
どうしたものか、と撮り合えず雪之丞は、彼女の頭をぽんぽんと撫でる。

「……じゃ…なんで………よ……」
「ん?」
何かを呟くワーズに、雪之丞は耳を傾ける。

「…私じゃ…駄目…なんです……よね」
「…何言ってるんだよ?駄目とか、まだ何もしてないのにさ、」
「帰っちゃったんです」
「…え?」
「ガルシアさん、きっと、私が来るまで…普通に、喋ってたんだと思います。けれど、…私が来てから、急に歯切れ悪くなって…それで、か…  ヒ…ック…」
「………そうか」
言葉が、続かない。

雪之丞は小さくため息を付く。
…なんでアレ、もしこじれたとしたら、発端は自分だ。
それまでは、…恐らく。客とバーテンダーとして、良き友人として…上手くいってたであろう。
そして恐らく、今後、2人は雪之丞を責める様な真似はしないだろう。
……確実、に。

「…なぁ、もしかしてさ、勘違いとか」
「………」
いやいやをするように、雪之丞の腕の中でワーズが被りを振る。
「……なんで?」
「…時々、私を見る目が…辛そうに…。…目を細めて…辛そうに、するんです。
…きっと、…歳だって、離れてるし…あの人は仕事に生きている人だし…
何より…重い…んです…。私の、気持ちなんて」
「…あのなぁ…そんな、…」
言いかけて、口を閉ざす。

思って、考えて、悩んで、そしてやっと口にした言葉を、
自信で簡単に否定できるはずは無い。

それは、
自らを鎖で何十にも戒め、暗く深い牢獄に陥れるように。






不意に、雪之丞は、あの日の、最後にガルシアにあった日の…
彼の言葉を思い出す。


『 私は、…彼女のこt………です…が…それは本当に………なのか………ない…の…ですよ』



(…私は、彼女の事を好きなのです…が、それは本当に
……本当の好きなのか…分からないのですよ)
断片しか聞き取れなかった台詞を、雪之丞はそう、解釈する。

…ならば。



そして、夢現にガルシアが…彼が呼んだのは、ワーズの名ではなく、




…不毛な恋と、彼女に言ってやれば、それで幸せなのだろうか。




ああ、けれども。




しとしとしと。
雨は止まない。
涙は止まらない。

涙雨は、どこまでも、振り続けるのをやめなかった。




















PS.



「じゃーん!ここが憩いの場所!お酒の飲める…喫茶『小夜曲』~♪」
ばばん!と腕を広げる50号。

「50号……誰、この人?」
訝しげに出迎える、黄薔薇のルキア。

「…うーん…いやぁ…行きたかったのはここじゃないと思うけれど…まぁ、いいかな」
男は苦笑し、そして、小夜曲の扉をくぐった。





(自分の店に案内しろ!
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2009.01.18 


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